CULTURE | 2020/07/01

「骨折り&中指」のおかげで注目度アップ?コロナ禍で加速するネット炎上の解決策【連載】青木真也の物語の作り方〜ライフ・イズ・コンテンツ(8)

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15年以上もの間、世界トップクラスの総合格闘家として、国内外のリングに上り続けてきた青木真也。現在...

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15年以上もの間、世界トップクラスの総合格闘家として、国内外のリングに上り続けてきた青木真也。現在はアジア最大の「ONE」を主戦場とし、ライト級の最前線で活躍。さらに単なる格闘家としての枠を超え、自ら会社を立ち上げるなど独自の活動を行う。

そんな青木は、自らの人生を「物語」としてコンテンツ化していると明かす。その真相はいかに? 異能の格闘家のアップデートされた人生哲学が今ここに。

聞き手:米田智彦 構成:友清哲 写真:有高唯之

青木真也

総合格闘家

1983年5月9日生まれ。静岡県出身。小学生の頃から柔道を始め、2002年に全日本ジュニア強化選手に選抜される。早稲田大学在学中に、柔道から総合格闘技に転身。「修斗」ミドル級世界王座を獲得。大学卒業後に静岡県警に就職するが、二カ月で退職して再び総合格闘家へ。「DREAM」「ONE FC」の2団体で世界ライト級王者に輝く。著書に『空気を読んではいけない』(幻冬舎)、『ストロング本能 人生を後悔しない「自分だけのものさし」』(KADOKAWA)がある。

人々が時間を持て余すコロナ禍が炎上を誘発する

一連のコロナ禍をやり過ごす中で、ふと考えたことがある。それは、世の中がこれほど批判を恐れ、悩まされている時代は珍しいのではないか、ということだ。

緊急事態宣言の発令以降、人々は外出を自粛し、できるかぎり家から出ずに生活を送るようになった。リモートで仕事ができる人であっても、それ以外の時間を次第に持て余すようになり、やがて暇で仕方がない現状に苛立ちを募らせ始めた。そうして人々がイライラを燻ぶらせている中で、わかりやすく餌食になってしまったのが、ナインティナインの岡村隆史や劇作家の平田オリザさんなどである。

もちろん、彼らの言動は平時であっても批判されたかもしれない。しかしタイミング的に、暇とイライラを持て余す人々にとって格好の標的であったのは事実。彼らの言葉はSNSを中心に瞬く間に拡散され、いつも以上のバッシングを受けていたように僕には見える。

こうして集中砲火を浴びる例は枚挙に暇がないが、これほど不毛なことはない。たとえ批判に対して真摯に反省の弁を述べたとしても、こぞって他人を叩きたがる人はまず納得しない。かといって、彼らを納得させられる反論など存在しない。何より、いちいち反応して見せると、本来なら1~2週間で収まる騒ぎが、1カ月も2カ月も長引くことになりかねないだろう。

だから、もし炎上の渦中に身を委ねるはめになったとしても、やるべきことはその機会に自分の意見を見つめ直し、それを守り通すことくらいのものではないかと僕は思う。これは僕自身、過去に何度も批判を浴びる体験を重ねてたどり着いた1つの境地である。

ところが、世の中にはあえて炎上を誘うような言動をとってリターンを得る、炎上商法を好む人もいる。実際、SNS上で名を馳せる人の中には、それが意図せぬものであったとしても、何らかの炎上騒ぎによって知名度を上げた人が少なくない。

周囲と同じ発言を繰り返していても、注目を集めることはできない。そこで、わざと世間の一般論とは“逆”に張ることで目立とうとするのが炎上商法の基本。ポジショントークを打とうにも、そもそもポジションのない場所に立たなければ上がっていけないことを、彼らはよく知っている。

ちなみに、僕がネット上で多少注目されるようになった過程にも、似たようなことが言えるかもしれない。ネットという公の場で、一時はさまざまな人間に噛み付いていた僕だが、自分より立場の強い者ばかりを相手にしていたからこそ、そのつど大きな話題になった節がある。たとえばDREAM時代の先輩・秋山成勲であったり、UFCという団体そのものなどが対象だったわけだが、これがもし、自分より弱い人間にケンカをふっかけていたなら、世間はたいした興味を持たなかっただろう。

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