文:滝水瞳
サボテン合皮を開発した男性2人
地球温暖化や大気汚染、資源枯渇などを背景に、世界各地で環境問題への対策が叫ばれている中、メキシコの起業家2人が同国で有り余るほど育っているサボテンから地球にやさしいヴィーガンレザー「Desserto」を開発したと注目を集めている。
サボテンの葉を潰して3日間天日干したあと特殊加工されて作られるこの合皮は、見た目や肌触りが本革そっくりで、洋服や革小物、家具や自動車などに使われる。サボテン成分の強力な分子が結合することで摩擦や伸縮などの耐久性や通気性に優れており、耐久年数は10年ほどだという。さらに水分や紫外線にも強いため牛革より手入れが簡単。価格は本革とほぼ同じで、肌触りや厚みなどもカスタマイズ可能だ。これまでさまざまな天然素材を使ったヴィーガンレザーは開発されているが、サボテンを原料とする素材は世界初の試みだという。
開発したのはメキシコの起業家、エイドリアン・ロペスベラルデさんとマルテ・カザレスさん。2人は自動車やファッション業界でレザーを扱っていたものの、彼らの従事していたビジネスが環境汚染につながることを知り辞職。地球にやさしい革製品を作るべく、「Adrian and Marte」を立ち上げた。
原料のウチワサボテンは、生育の観点からもエコロジーな植物だ。農薬を使わない有機栽培で育つうえ、1度植栽すれば約8年間は定期的に収穫できる。また雨水と地元の豊かな土俵だけで育ち、灌漑システムの必要がない。さらに葉は食用にもなるため、余った場合は食品業界に販売しているという。