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岸田繁・光田康典対談「民族音楽もゲーム音楽も好きになったらとことん突き詰める」(後編)
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  • 2019.07.24
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岸田繁・光田康典対談「民族音楽もゲーム音楽も好きになったらとことん突き詰める」(後編)

この記事はZing!2017年8月31日に公開された記事を転載しています。

くるり・岸田繁さんと、作曲家・光田康典さんの対談の後編です(前編はこちら)。今回も(ほぼ)ノーカットでお届けします!

インタビュアー:Zing!編集部ピーター/テキスト:ピーター・トライアウト組橋信太朗/撮影:田中利幸

岸田繁

1976年京都市北区生まれ。ロックバンド「くるり」のフロントマンとしてギター、ボーカルおよび作詞・作曲などを担当する。立命館大学在学中の1996年、音楽サークル「ロック・コミューン」内でくるりを結成。1998年、シングル「東京」でメジャーデビュー。メジャー1stアルバム「さよならストレンジャー」以降、コンスタントに作品を発表し続ける。ソロ名義では映画の劇伴音楽制作や多くのアーティストとのコラボや楽曲提供などにも関わり、2017年には京都市交響楽団演奏による「交響曲第一番」をリリースした。

光田康典

作曲家、編曲家、プロデューサー

1992年スクウェア(現スクウェア・エニックス)入社、1995年『クロノ・トリガー』で作曲家デビュー。『ゼノギアス』等の作曲を担当した後、1998年に独立。フリーランスで活動後、2001年プロキオン・スタジオを設立し、同社の代表を務める。
主な楽曲代表作に、『クロノ・クロス』『ゼノサーガ エピソードI』『新・光神話 パルテナの鏡』『イナズマイレブン1~3』『黒執事 Book of Circus』他多数。

常にそのときの一番新しいやつが一番やと思ってます(岸田)

――お二人は共通して好きになったらとことん掘り下げていくんですね。あるときは楽器まで買うという一連の体験が重要なんですかね。

光田:ある程度消化しないと出てこないですよね。コーヒーを淹れるみたいに、フィルターを通して凝縮して絞り出したものじゃないとなかなか自分のものにならない。

岸田:そうですね。だから「コレが流行ってるからコレやってみよう」と思ってやるとペラッペラの薄いものになってしまいますよね。

光田:深みがなくなりますね。

岸田:まあ、それもポップ・ミュージックの良さだったりもするかもしれないけど。でも、やっぱり本格的にはまって再現しようと思って、それが何かの拍子にふっと出てきて「よっしゃ!」と思うことがあります。

――自分が腑に落ちるまでやるということでしょうか。

光田:納得するというか、こうだったんだなと理解するというか。そういうことなんでしょうね。

岸田:試験前に因数分解とか、たとえばリチャード何世とか覚えるけど、覚えてもし良い点とれたとしても、すぐ忘れるじゃないですか。そういうことって音楽でもあって、「こういう風にやろう」って勉強することはあるんです。けど、古典対位法とかグレゴリオ……とかなんとかやってて、「なるほど」とそのときは思っても、それを活かしてやり始めると全然違う。本格的にそれが面白いなと思ったときはたぶんそのあとで生きてくるな、と思うんですけど。

――それが最高にはまった、好きなものとことん詰めてできたものってありますか? これは会心の一撃だったな、というような。

岸田:常にそのときの一番新しいやつが一番やと思ってます。例えばこれ(「Liberty&Gravity」)なんかもつくってるときは「俺すごい」とか思ったけど、今つくってるもんの方が新しいというか。

――「Liberty&Gravity」は最初聴いたとき衝撃でしたね。展開がどんどん変わるおもしろい曲ですよね。

岸田:この曲は最初弾き語りでつくったんですよ。そういう「一筆書き」でできたからやと思います。弾き語りでつくってメンバーに聴かしたら「いや、意味わからん」って言われましたけど。

一同:(笑)。

岸田:じゃあこうやってこう、ってメンバーと合わせて。コードとかは理解されなかったんで、とりあえずわかりやすいコードにして。

――そういう弾き語りを佐藤さん(佐藤征史さん、くるりのベーシスト)たちに聴いてもらって佐藤さんがベースラインを考えて……という風に曲作りをされるんですか?

岸田:この曲とかはそうですね。ただ、バンドやってるからそこらへんはややこしくて。自分はベーシックなアイデアしか投げへん場合もありますし、自分で全部書いてメンバーにお願いする場合もあります。あるいは僕が何かをやった風で何もやってなくてバンドの人たちが作り上げたのもあります。それによって音楽のスタイルは変わりますね。
ふわーっとロックっぽい曲というのは自分では何もしていないこともあります。もちろん楽器弾いて歌ってるんですけど、曲をこうつくって、という感じではないものも。これ(「Liberty&Gravity」)は割と「こうしたい」というのがあったんで、細かくフレーズもつくってたんですけど。ずっとバンドとしてやっていて、コードと拍子とかは指定したとしても、曖昧に間違ったままやってそれが良いこともあります。例えば、ロックバンドとかの音楽じゃない、それこそ光田さんがやられている音楽の世界っていうのは僕はたぶんできないと思うし、同時にすごく憧れがあるんですよね。1人でやられていて、マニピュレートができて。でも、そんなにやりたいことは変わらないんやな、とは思って。僕も年齢が年齢なんで、バンドの表現とは違うこともやっていこうと思っているんです。

そういう1つのシークエンスから、ちゃんとした楽曲に移り変わっていた時代だったんですよね(光田)

光田:1人でつくっていると、こう、閉じこもっているじゃないですか。2年くらい前に20周年ということでライブをやったんですけどすごく楽しかったんですよ。人とやる楽しさっていうか、こういう楽しみ方もいいな、と。

岸田:そのライブのときの編成はどういうのだったんですか。

光田:編成は少し変わってて、イーリアンパイプと、アコーディオンと、ブズーキ、コーラス隊でブルガリアンっぽいのをやったりとか。

岸田:光田さんの音源でそういう民族音楽っぽいのってありますか?

光田:無国籍なのが多いんですよね。「クロノ・トリガー&クロノ・クロス アレンジアルバム/ハルカナルトキノカナタへ」とかですかね。この「マブーレ」なんかはけっこう民族音楽っぽいですよね。いろんなのが詰まってますね。1曲目(「時の傷痕 ~ハジマリノ 鼓動~」)なんかはレッド・ツェッペリンみたいなのも入ってます。

岸田:あ、この曲は吉良さん(ロックユニット・ZABADAKの故・吉良知彦さん)とやられているんですね。

光田:そうなんですよ。すごく仲が良かったんですよね。

岸田:すごく好きでした。

(マブーレが流れる)

「マブーレ」は上の動画の3:13~

光田:イントロは北欧っぽいですね。

――原作(「クロノ・クロス」)では、地中海というか九寨溝みたいなきれいな場所で流れるんですよね。

岸田:すごく「クロノ・クロス」やりたくなってきました。(「マブーレ」)すごくいいですね。アイリッシュっぽくて。すごくきれいな音で録れてますね。

光田:はい。ハイレゾでも録ってるんですよね。

――原曲は中世の古楽ですよね。それに途中に入るフレーズがゲーム内では重要な意味を持っているんですよね。

光田:そうですね。いろいろなテーマと絡んでいて。

岸田:光田さんはゲームをやられるのも好きなんですか。

光田:はい、好きなんですけど最近はなかなかプレイする時間がなくて。

岸田:大人ってやる時間ないですよね(笑)

――僕は最近「アナザーエデン」をやっているんですけど、オープニング曲は光田さん、他の曲は光田さんと同じプロキオン・スタジオの土屋さんとマリアムさんがてがけられていますよね。ゲームの内容的にも、音楽的にも「クロノ」に通ずるところがあって、すごく良いんですよね。

岸田:あ、これからいっぱい(光田さんの曲とゲーム)追いますね。マブーレ、すごくいい曲ですね。好きです。手に入れよう。

光田:ありがとうございます。

(「次元の狭間」流れる)

「次元の狭間」は上の動画の3:43~

岸田:これもいいですね。「良い」しか言えへんけど。

――僕も「クロノ・クロス」で一番好きな曲です。オリジナルサントラのライナーノーツでは、この曲は「2時間ぐらいでできた」とありましたが。

光田:これはイメージがしっかりしてて、自分探しがテーマでしたからね。

――ゲーム内でもそういうシーンで流れますもんね。カオスフィールドっていうよくわからないところに主人公が急に落とされるんですよね。自分が宿敵と入れ替わってしまって、というすごくつらいシーン。僕はここでこの曲が流れて、もう籠絡されたというか、一番へこんでいるときにこんな曲流されたら……と。

岸田:ええ話ですね、それは。光田さんはゲームの音楽って聴いてはりました? 好きなゲーム曲とか。

光田:そうですね。やはり「ドラクエ」や「FF」は好きで、僕が小さい頃、姉がよくやっていたので隣で聴いていましたね。自分でゲームをするようになってからは、ファルコム(日本ファルコム)のゲームが好きでしたね。

岸田:何のゲーム出してたところでしたっけ?

光田:「イース」とか……。

岸田:「イース」! ああ……。

光田:「ザナドゥ」とか……。

岸田:「ザナドゥ」!

光田:その辺のゲームから、当時PC-8801mkⅡとかからFM音源をのせはじめて、ピープ音、いわゆるピコピコしたゲームっぽい音から、音楽表現が広がった時代でしたね。ゲームのなかでもちゃんとBGMとして音楽が流れ始めたころで。

岸田:ちょうどそのくらいですよね、背景音楽が流れたのは。こう、和音がついててとか。

光田:それまでは「ゼビウス」みたいなのが多かったですよね。

岸田:あれはあれでかっこよかったですよね。パコッパコパコみたいな。

光田:そうですね。そういう1つのシークエンスから、ちゃんとした楽曲に移り変わっていた時代だったんですよね。

すぎやまさんがいらっしゃらなかったら、ゲーム音楽というのも今とは違うものになっていたでしょうね(光田)

岸田:そう考えると、すぎやまこういちさんってすごいですよね。

光田:ゲームに対して「音楽」というアプローチを初めてされた方なので。すごかったですよね。すぎやまさんは初めPCのゲームをやられていたんですよね。聞いた話では、ゲームが好きでやりこまれていたみたいですね。歌謡曲も書かれていたんですけど「ゲームがやりたい」ってご自分で売り込みにいったみたいなんですよね。そこから「ドラゴンクエスト」につながったと。

岸田:奥さまがエニックス(現スクウェア・エニックス)に書簡を送られたみたいですね。クレームというか……「森田将棋」か何かのバグを見つけた、と。で、当時「ドラクエ」の音楽を誰に依頼するか悩んでいた担当の方が「そういえばクレーム対応で来てるこの『すぎやま』さんってあの『すぎやま』さんかな?」ってなって、そこから話が進んだと聞いたことがあります。

「ドラクエ」の音楽はお城に入ったらバロックがかかって、序曲はワーグナー的なファンファーレでとか。大人たちが「所詮ゲームだよね」っていう世界観から全然違うところにいって。あの音楽を聴きながら育てたのはラッキーやったなって今でも思います。

光田:すぎやまさんがいらっしゃらなかったら、ゲーム音楽というのも今とは違うものになっていたでしょうね。

岸田:そういえばさっきの「ザナドゥ」もすごく音楽好きやったんですよね。

光田:アラブっぽい音楽で、面白いアプローチでしたよね。

岸田:あと「ハイドライド」とかも好きでしたね。浅倉大介さんも昔ゲーム音楽やられてたんですよね。

――ゲーム音楽ってほとんどループして繰り返し聴くものが多いと思うんですが、その作り方って難しいところはあるんですか。

光田:そうですね、やっぱり転調すると戻ってこなきゃいけない、ってところですかね。僕はプログレが好きなんで、どんどんどんどんキーが変わっていくような曲は好きなんですけど、戻ってこれなくてどうしよう、みたいな(笑)。

――「クロノ・クロス」の「航海 アナザー・ワールド」はまさに転調して戻ってくる曲ですよね。いわゆる「II-V(ツー・ファイブ)」の進行で。

光田:そうですね。これもそういう展開の曲です。あとはゲーム音楽では、飽きさせないつくりにするのが難しいですね。

岸田:音楽によってゲーム自体がだれる、というのもありますもんね。

(「航海 アナザー・ワールド 」が流れる)

光田:この頃は内蔵音源なので、限られた容量のなかで作っていかなければいけない時代でしたね。

――このギターのフィンガーノイズも内蔵音源で再現されていたのですか?

光田:そうですね。そういう音もわざと入れて。

岸田:そうなんですか。

光田:1つの音色、フィンガーノイズだけだと嘘くさいので細かく数種類、5種類ぐらいつくって入れていましたね。でもそういうことをやっていると容量がなくなってくるんですよね。そこのさじ加減が難しくて。

岸田:なるほど。(「航海 アナザー・ワールド」を聴きながら)あ、ここで転調して……戻ってきましたね。

光田:船の上ですーっと進んでいくときに流れるので、「前へ前へ」とやりたいんですけど、転調したら戻さないといけないという。そこがとても難しかったですね。

色々視点が考えられるときが制作する上では一番つらいかもしれないですね(光田)

岸田:光田さんが曲を作られるときって、曲想がしっかりあってそれをぱっと作られるんですか。

光田:そういうときもありますね。イメージがわーっと膨らんで、すぐにできることもあります。でも全くイメージが湧かないときも。また色々な視点が考えられるときが制作する上では一番つらいかもしれないですね。キャラクターが二重人格だったらどうするか、とか。このシーンは主人公キャラ視点で音楽をつくるべきか、敵視点でつくるべきか、またはプレイヤー視点でつくるべきか、とかこういう内容なので、カメラ視点で曲を書くのもいいんじゃないか、とか。トータルでベストな表現方法を前後関係を見ながらつくらなければいけないのでかなり大変ですね。

岸田:うーん、面白い。

――「クロノ・クロス」のシナリオは、主人公が別のパラレルワールドに行ったと思ったら、そこは自分が死んでしまっている世界なんですよね。それもそっちが本来の世界という。だから、「アナザー」ワールドの方が同じ曲でももの悲しいアレンジなんですよね。

光田:そうですね。「アナザー」の方を暗めにしていますね。「クロノ・クロス」が面白いのはそうやって世界を行き来しているうちに、自分がどっちの世界の人間なのかわからなくなるところなんですよね。その中で自分の生きる道を探していく、というのが作品のテーマで。

――そういうゲームのテーマと曲の作りがしっかり結びついているのがすごいな、と改めて思います。

光田:そうですね。そういう意味ではゲームに色々な哲学が入っているんですよね。「クロノ・トリガー」はどちらかというと「演劇」っぽいつくりがされていて、笑いあり、怒りあり、涙ありというものでした。「クロノ・クロス」は「クロノ・トリガー」をプレイした、当時小学生だった人たちが中学生、高校生になって少し大人になり、自分の人生について考えるタイミングに「自分で選択することの厳しさと難しさ」を感じてもらえるようなテーマだったですよね。だから「クロノ・トリガー」が好きだった人には「クロノ・クロス」に対して批判的な意見も割と多かったんです。

岸田:もっとパーソナルな要素が強かったんですね。

――僕はまさに今のような成長過程で「クロノ・クロス」をプレイしたのでドンピシャでしたけどね。中二病といいますか、自分探しの時期にこの作品をやったのでもう衝撃的でしたね。ゲームが終わった後しばらく何もできなくて。

岸田:ゲームでもありますよね。そういうの。「ドラクエ7」が終わったとき立ち直れなかったですもん。どよーんとした。

――100時間くらいやっているわけですもんね。

岸田:はい。新しいの(「ドラゴンクエストⅪ」)もやりとうてやりとうて仕方ないんですけど、もう「やったら終わる!」と思ってできてない(笑)。うちのツアーメンバーもやっていて、すごく良い作品だとは聞いているんですけど。

(「死炎山」が流れる)

――あ、この曲はここからアフリカンビートが入るんですよね。

光田:はい。途中からイーリアンパイプと、ジャコパス(ジャコ・パストリアス、アメリカのベーシスト)が混じっている。

岸田:いいですねえ。ジャコパス。「ワード・オブ・マウス・ビッグ・バンド」の頃の。

ストリーミングで探して買う、っていうのは最初すごく抵抗あったんですけど、やっぱり便利で楽しいんですよね(岸田)

岸田:本当に光田さんは音楽お詳しいですね。音楽を聴かれるときは何で聴かれることが多いですか。

光田:ちゃんとした音で聴きたいので、なるべく時間を作ってちゃんとしたスピーカーで、CD音源を聴くことが多いですね。ハイレゾが売っていたらそっちを選ぶようにしています。なるべく作者が求めた音のままで聴きたいというのがあります。出ているメディアの最高音質で。

岸田:いいですね。最近Spotifyとかも聴くんですけど。音は良くないんですけど、あれは便利なんですよね。なんとなく自分がなんとなく知っているけど深くは知らん、みたいな音楽を探せるので。ただ音はFMに似た感覚ですね。

光田:僕も昔はiTunesで試聴したらCDを買う、ということが多かったですね。いわゆるライブラリとして活用していましたね。

岸田:見つけるための手段としてはいいですよね。僕もそうです、ほとんど。

光田:最近は探すのが大変ですからね。

――光田さんは昔タワレコ(タワーレコード)でガシャガシャ鳴るまでカゴにCDを入れて買っていたとか。

光田:そうですね。渋谷のタワレコ1階から最上階まで1階ずつ制覇していくみたいな(笑)、7時間ぐらいいるということもありました(笑)。

岸田:そうですか(笑)。当時お会いしてたかもしれませんね。僕もずっとそんなんやったんで。

光田:僕も入り浸ってましたね。で、会計になると10万円くらいになっていて……。タワレコの店員さんにも「それ以上大きい袋ありません」って言われて持ち帰られずに「すみません、じゃあ2日に分けて来るんで」なんて言ったりして(笑)。

岸田:「もう、持てないんで特典要りません!」って言ってましたね。今はもう全部Amazonで買うようになりましたけど。

――音楽の探し方も変わってきましたよね。

岸田:変わりましたね。ストリーミングで探して買う、っていうのは最初すごく抵抗あったんですけど、やっぱり便利で楽しいんですよね。探すのが日々の楽しみになる。家で朝によく音楽を聴くんですけど、だいたいかける曲決まってるんですよ。アマリア・ロドリゲスのファドか、ブラジルのコーラス音楽とか。

最近はSpotifyとかで人のプレイリストを見ることができるんですよね。例えば「今日は70年代の気分かな」と探したら、けっこう「お前わかっとるなー!」ってこともよくあって。ジョージ・ハリスンの、良い曲なんだけどあんまりみんな意識してないような曲が入っていたり。それで気に入ったら、CD買ってとかあるんです。

これが好きで音楽やってるんちゃうかな、というぐらい(笑)。半音ぶつけんの好きで(岸田)

光田:この曲(クアルテート・エン・シーの「サンバ・カンソンのアンソロジー」収録曲)も良いですねえ。すごくきれいな声。

岸田:いいですね。最近南米のミュージシャンは勢いがあるんですよね。色んな人がニューヨークに出ていったり、クラシック界でも良い人が増えてきているんですよ。

光田:このCDは1976年に出たやつですね。あ、この半音と半音がぶつかるところ、たまらないですね。

岸田:そうなんですよ。これが好きで音楽やってるんちゃうかな、というぐらい(笑)。半音ぶつけんの好きで。現場じゃ嫌がられますけどね。バイオリンの人とかに怒られるんですけど。「これ間違ってるよ!」とか言われたりして。

光田:いやいや、それでいいんです、と(笑)。

岸田:あと、このアルメニアン・ジャズの人気が出た人もおすすめです。ヤバいんですよ。

この人(ティグラン・ハマシアン)もう今すごく人気で、若い人なんですけどね。天才ピアニストです。

(ティグラン・ハマシアンの「Shadow Theater」1曲目「THE POET」が流れる)

岸田:ライブ観たんですけど、弾きながらサンプリングして、それでノイズ作りながらまた演奏してました。アルメニアの民謡を題材にして曲を作っているらしくて。これは「やば!」と思って。

光田:それはすごい(笑)。いいですねえ、この曲。このこぶしのつけ方ってちょっとブルガリアンっぽいですよね。

岸田:そうですね。アフリカンっぽいところもありますね。曲の後半に「中二病RPG好き大喜び展開」があるんですよ。

光田:これは「買い」ですね。

岸田:けっこうアルバム出てて、プログレっぽいのもあるんですよ。僕はこれ(「Shadow Theater」)が一番好きです。……あ、(「中二病RPG好き大喜び展開」)来ましたよ。
(※「THE POET」2:49あたり)

光田:良いですねえ。コード感がいいですね。ちょっとポリリズム(複数の異なる拍子のリズムが同時進行する状態)っぽくなってくるんですね。

岸田:そうですね。ポリリズムっぽいんやけど、なんかこうラーミア(「ドラゴンクエスト3」などに登場する不死鳥ラーミア)とかに乗ってる気分になるんですよね(笑)。

光田:たしかに(笑)。ああ、すごく気持ちいい展開ですね。

岸田:この人はジャズやフュージョンの世界の人ですけど、最近アメリカとかのポップス、ロック、R&Bっていい意味でシンプルなものが多いじゃないですか。展開も音数も少なくて、と。こういう世界の人らってとにかく詰め込むんですよ。僕は割とそういうことを自分がものつくるときもやってしまう方なので、こういう人たちがいると安心します。4曲目も面白いですよ。

(「Shadow Theater」の「DRIP」が流れる)

光田:すごいな……。

岸田:やばいんですよ。直近の来日予定見たら東京もあるんですけど、他が奄美大島とかで。遊びに来てるな、って感じですよね。

――ライブで聴きたい感じですね。

岸田:ライブ行ったんですけどすごかったですね。もちろんCDにある曲もやるんですけどその通りにほとんど演奏しないんで面白いです。

光田:この音階を持ってくるんだ、というのが面白いですよね。

まとめ

――ずっと続けたいところなんですが、お時間が来てしまい……。すごく楽しかったんですが、おふたりに共通するのが「好きになったらとことん突き詰める深度」というところかなと思いました。一方で、ハマれない人もいるかな、とも思うんです。どうしようもないことかもしれないですが、そうやって感受性が高い状態でいて突き詰められるのはなぜなんでしょう。

光田:僕は小さい頃は飽きっぽくあれもやっては「つまんない、やめた!」で全然長続きしなかったです。その都度親に「いいかげんにしろ!」って怒られていました。でも色々やっていくうちに音楽だけは続いている。ということは、何か自分が面白く思えるポイントがあったんだろうな、と思うんです。ずっとやっていると色々見えてくるじゃないですか。
なんでもそうですが、最初は全然わからないことが多くて「面白くないからやめちゃおう」って思うこともあるんですけど、実はもう一歩かもしれないんですよね。もう一歩踏み込めばハマれてたかもしれない。その前でやめてしまっているのかもってことはあるかもしれません。音楽の場合はそれを仕事にしたので「とりあえずもうちょっと見てみようかな」と続けて、ある一線を超えた瞬間にそれがあまりにも面白くなってハマっちゃうという。現代音楽もそうですけど、何をやっているかさっぱりわからないんですけど、もっとわかりやすいところから入っていって、いつかその一線を超えたときに面白くなると思うんです。
その見極めが難しいといえば難しいんですけど。だから、ハマれない、という人はもう少し粘ってみるといいんじゃないですかね。意外と早く諦めている可能性もある。「ここまでやったらやめようかな」と言って最後に調べたことが、ハマるポイントになったことも多かったんで。

岸田:私も全く一緒です。光田さんがおっしゃったことと。やっぱり音楽を仕事にしたからハマれている。で、なんで音楽を仕事にしたかというと若いころやし目立ちたいと。人気商売みたいなところありましたから。でも音楽好きやなかったら、割が悪いとすぐやめてたと思うんですよね。バンドが楽しくてワーキャー言われるのが嬉しいっていうのがあったんですけど、やり出すと自分が何をやっているのかはどうでもよくて、案外音楽つくることそのものだったり、インプットするもんだったりが楽しくなってきたんですよね。
ミュージシャンになると音楽まみれの生活ができる、と思っていたけど、実際そうじゃない仕事もあるんですよね。でも音楽に使える時間も価値観も増えてきたんで、そうなってくると「何かをしないといけない」感覚はなくなってくるし、「別にそんなんせんでもええ」って考えるようになってくるんで。そしたら自分のやりたいことをやってそれが楽しくて、それでたまたま誰かが喜んでくれたらその人たちを大事にして……。
自分自身のことを理解することっていうのは、なかなかできないと思うんですけど、自分のことを考えるっていうのは大事だと思うんですよね。人のことを考えることが自分自身を考えることにつながることもあるし、社会のことでも趣味のことでもいいし。それを通して自分自身に向き合うということと、「自分探し」とはちょっと違うと思っていて。何かにハマらなくてよかったら、ハマらない方がいいと僕は思うんです。お金と時間が奪われるし、そんなことよりやらないといけないことがいっぱいあるんで。でもたまたまこういう仕事をしているから音楽にハマったけど、ハマらんかったらハマらんかったで、今できひんことができてたんやろな、と思ったりしますね。

――ありがとうございます。今日お話を聞いて、おふたりの熱量がすごくて、それがおふたりの作られる音楽にも注がれているし、だから私たちも曲を聴いてその熱量に「おおっ」と感動させられるんだろうな、と思いました。

光田:いえ、こちらも非常に楽しかったです。もっとお話したいですね。

岸田:またぜひ遊んでください。

――本日はありがとうございました!


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