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「忖度まんじゅう」以降もヒットを飛ばすヘソプロダクション。面白い発想のコツとは?
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  • 2019.06.13
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「忖度まんじゅう」以降もヒットを飛ばすヘソプロダクション。面白い発想のコツとは?

この記事はZing!2019年3月4日に公開された記事を転載しています。

テキスト:トライアウト・榊間信介/撮影:トライアウト・田村朋子

政治の舞台から飛び出し、一躍2017年の流行語となった「忖度」。それをモチーフにした忖度まんじゅうをはじめ、話題性のある商品を次々と生み出す大阪の会社「ヘソプロダクション」。その代表である稲本ミノルさんに、独創的なアイデアを生み出す方法や大切にしている哲学などを伺いました。

アイデア出しは大喜利に近い感覚

―― ヘソプロダクションから生まれるプロダクトは独創的なものが多く、ヒット商品もたくさんあります。そのアイデアはどうやって生まれているんですか? 

商品の企画やコンセプトなどは僕ひとりで考えています。商品そのものだけでなく、どう見せるのかということや、どう仕掛けるかといった部分も考えています。課題解決は大喜利のように考えていて、消費者やクライアントのフワッとした課題に対して、どう面白く答えるかだと思っています。だから、あまり具体的な課題があるよりも、何も決まっていない方が燃えますね(笑)。忖度まんじゅうの場合は、まず言葉の意味を調べてみて、日本の文化に寄り添った言葉だなと感じたんです。そこから「重み」や「甘み」などのキーワードを連想していった結果、和菓子やあんこに繋がっていきました。

―― 商品化に際してクライアントから相談はあったんですか?

忖度まんじゅうに限らず、アイデアはこちらから提案することの方が多いですね。忖度まんじゅうは当初、社内の6~7割くらいの人から反対されていたんですよ。政治的な流行語だけに、そのイメージを嫌がる店舗さんも多かったみたいです。

僕は純粋に面白いと信じてプッシュしていましたが、商品化までは想像以上に時間がかかりました。たとえ良いものを作っても、世に出なければ意味がないなと悩んでいました。

―― 発売まで予想よりどのくらい延びたんですか?

発売したのは2016年の7月ですが、実は5月には発売できる状態だったんです。約2カ月くらい押しました。「周りの状況次第で置くかどうか決める」というような店舗さんもあって、まさに忖度だなと(笑)。そんなこともあって、「絶対ヒットさせてやろう!」と意気込んでいました。いい結果だったので、本当に嬉しかったですね。ビジネスマンの胸には刺さるんじゃないかと信じていましたから。

ひとりだから覚悟が生まれ、スピードも上がる

―― ご自身から提案されることが多いと話していましたが、大変ではないですか?

覚悟を持ってやっているから、大変と思ったことはないですね。むしろスピードが速くなるメリットがあります。例えば他にも担当社員がいて、チームで企画を動かす場合は開発費用も何千万とかかるような場合が多いですよね。もちろん成功すればリターンも大きいですが、売れなかった場合は全員に責任が生じます。だからリスクを回避するために、マーケティングやリサーチをすることになると思うんです。僕にとってはその時間が無駄なんですよね。

―― 大企業では難しそうな動き方ですね。

そうかもしれませんね。でも時代感というか、目まぐるしく変わる現代社会の動きに遅れないようにするには、そのスピード感がとても重要。いろいろな施策を考えたりモタモタしていると、あっという間に6カ月や1年といった長期プロジェクトになってしまいます。面白いと思うことはすぐにやりたいし、売れなかったら自分が責任を取る。そういうスタンスで動くのには一人が丁度いいんです。その覚悟があるからスピードも速まるし、面白いものができると信じています。

―― スピード感はどのくらい違いますか?

感覚的には普通の企業が6カ月かかるものを、僕は3カ月でフィニッシュします。そのスピードであれば、年間約1500~2000個の商品を手掛けられます。

―― そんなに作られるんですね。他に大切にされていることはありますか?

実は、ネットやSNSで話題になることは、それほど重要視してないんです。リアルの方が大切だと思っていて。店舗や販売員、消費者の感覚が何よりも重要です。だからアイデアを生み出す時は、店頭で商品を触ったり、空気感を感じるようにしてます。トレンドなど、さまざまな要因で解釈の仕方は変わります。同じ商品を開発しても、去年と今年では違うものができるはず。だから決まった課題解決方法は決めてないんです。

それと事業領域を決めていないことも弊社の特徴です。領域を定めることで一つのジャンルに特化できる一方、「そんなことは無理だ」という考えに陥りがちじゃないですか? 僕の場合、面白いと思ったことであれば業界は関係ありません。無理だと考える前に、“どうしたら実現できるか”を深く考えるようにしています。人ができないと思うことにこそ、勝機があるんですよね。

指示は「具体的にしない」ことがカギ

―― ヘソプロダクションを立ち上げられたのは2014年ですが、以前からものづくりやデザインはされていたんですか?

デザインの経験はないですが、手描きのラフなどは描きます。言葉とそのラフを使ってデザイナーに伝えていますね。それと、学生時代はポエムを書くなど、ずっと書き物をしていました。だから、何かを伝えたり表現することはずっとやっています。

―― 伝える際に気を付けていることなどはありますか?

「具体的にならないように」と頭の片隅に置いています。デザイナーに商品イメージや指示を伝え過ぎると、そのまま出来上がってしまうんです。ものづくりをする過程では、自分が思ってもいない発想が絶対に必要です。だから、頭の中でプロダクトのヴィジョンが浮かんだとしても、あえてフワッと抽象的に伝えます。そうすると自分も考えなかったような考えや切り口が出てくる場合があるんですよ。外れることもあるんですけど(笑)。ヘソプロダクションにお願いすれば、何か面白いことをやってくれると思っていただきたいですね。

商品は常に未完成。売り場にこそ答えがある

―― これまで数多くの商品を手掛けられたと思いますが、特に記憶に残っているものはありますか?

そうですね、創業当時につくった「ブレーキハンドル型ボトルキャップオープナー」は思い出深いアイテムのひとつです。これはペットボトルの蓋を開ける道具で、蓋にセットして使いますが、電車のブレーキに見立てた商品で鉄道ファンに反響がありました。それに、高齢者の方にも支持されたんですよ。

―― それはどうしてですか?

持ち手があるので、高齢者の方が、ペットボトルを開けるのにピッタリだったんですね。それでかなりのヒットになって、販売していた京都鉄道博物館にはまとめ買いに来る人もおられたそうです。このように、自分では考えていなかったような使い方を消費者に気付かされることがあるんです。売り場を大切にする意味は、こんなところにもあります。

―― 今後やってみたいことはありますか?

いろいろありますが、テーマパークには興味がありますね。今つくっているものは商品が多いので、人が集まらない限り売れません。でもテーマパークは自然と人が集まってくる。そういう場所に興味があります。人を集めるといえば、ものづくりの過程では売り場をつくることを第一に考えています。どんなに素晴らしいプロダクトをつくっても、売り場が魅力的でなければどうしようもないので。だから、足を運んで魅力的な売り場のために必要だと思えば、例え競合企業のものであってもお客様に提案します。まず売り場を整え、その後に商品開発をすることが重要です。

他人よりもとことん考え抜き、半歩下がる。

―― 面白い発想をするためのコツなどはありますか?

とにかく考え抜くことです。何か難問にぶつかったとき、考えてしまうことをやめる人が多いと思うんですよ。でも、そこをあと一歩踏ん張って考える。僕の場合は同時にいくつもの案件を動かしていますので、限界まで考えたら別の案件について考え始めます。それも行き詰ったらまた次、というように継続的に考え続けることが大切ですね。行き詰ったネタについては、いったん置いておく。僕の感覚では「天高く舞い上げておく」感じなのですが(笑)。

―― 舞い上げておくというのは面白いですね。

それが数日寝て起きたら、それが戻ってくる感覚があるんですよ。そうやって手に入れた答えで、あらゆる問題が解決しているんです。自分でも不思議なんですが、とにかく考え抜いて天に放り投げたら、あとは信じて待つのみ(笑)。ただし、中途半端に考えただけでは決して良いアイデアは戻ってきません。様々な情報を手に入れ、考え抜いた末にいったん手放す。その手放すタイミング掴めば、魅力的なアイデアを生み出せると信じています。

―― 話題性という部分は意識されていますか?

話題性は、何かを売るためには必要な条件ですよね。だからあえて意識しているわけではありません。とにかく考え抜き、半歩下がる。そのさじ加減が世の中にモノを売る秘訣だと感じています。

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