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働き方は「手段」で、「目的」ではない。脱会社員がゴールにならない豊かな生き方のススメ
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  • 2019.05.31
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働き方は「手段」で、「目的」ではない。脱会社員がゴールにならない豊かな生き方のススメ

この記事はZing!2019年4月8日に公開された記事を転載しています。

吉川ばんび

1991年生まれのフリーライター。若者の働き方について多数のメディアで執筆活動を行う。取材・インタビュー・コラム・エッセイなど幅広く活躍中。

最近Twitterやネットを見ていると「普通の人生なんか送りたくない!」と言っている人々の存在が目立つようになった気がします。

ついには友人までもが「普通の人と同じように生きるなんて……」と口にし始めたので、つい気になって「普通の人生って、何だと思う?」と聞いてみました。すると「就職して、会社員として生きること」だと言うのです。さらに「どうして会社員として生きるのが嫌なの?」と聞くと、友人は「平凡だから」と答えました。「平凡の何がいけない? じゃあ、君が思う特別なこと、例えば何がやりたい? 何者になりたい?」と聞くと、友人は「うーん、分からない」と頭をポリポリと掻きながら首を傾げてしまいました。彼は、自分が会社員として働いているにも関わらず、現状に不満を持っていて、今の働き方に嫌悪感すら持っているようでした。

別に責めるつもりはなかったのですが、真意を聞きたいがあまり、最終的には友人を困らせてしまいました。

しかしこのとき、私は「会社員として生きるのが平凡な人生だ」という考えに対して、危機意識を持ったのです。

もはや「普通」とは何なのか?

働き方改革以降、良くも悪くもさまざまな働き方が一般化し、ダイバーシティ、いわゆる多様性のある社会づくりが提唱される中、「普通」とは一体何を指すのでしょうか。もはや私たちが考えてきた「普通」は、今や多様性の中のひとつの「個性」でしかないのかもしれません。

「会社員は嫌だ」と言っている人たちのうち、どれほどの人が「自分が会社員によって生かされている」ことに気が付いているでしょうか。電車も、着ている服も、住んでいる家も、今手に取っているであろうスマートフォンも、会社員がいなければ手に届くこともなく、存在することすらありません。会社員に生かされながら、その働き方に嫌悪感を持ち、「俺は平凡な人生を送りたくない! 何をやりたいかは分からないけれど、とにかく会社員はやりたくない!」と言う。

彼らの中ではきっと「フリーランスや起業家として生きること」が「手段」ではなく「目的」になってしまっているのでしょう。私としては「ゴール設定」が「脱会社員」になっている以上、例えば彼らが何かをやったとしても、おそらくうまくいかないのではないか、と思ってしまうわけです。

働き方は「手段」であって「目的」ではない

最近では「会社員として働くのが嫌だから、やりたいことはまだ分からないけれど、とりあえず有名な人が運営するオンラインサロンに属してみた」という人をよく見かけます。

個人的には、正直「いや、それこそみんなと同じく流行りに乗ってない!?」と思いますし、「フリーランスになりたいけれど何をしたらいいか分からないから、オンラインサロンに入ってみる」という人たちは今やたくさんいて、めずらしいことではなくなっています。

例えば明確な目的があって、それを達成するための手段としてフリーランスという働き方を目指すのはとてもいいことだと思います。しかし、フリーランスになることを最終目標に設定してしまうと、やるべきことや必要なスキルが明確になりづらく、成長機会も得られません。そうなってしまうと、特に生存競争の激しいフリーランス業界では、生き残ることが難しいのが実情です。

そして「働き方の選択が手段ではなく目的になってしまっている」ケースは、「会社員として働くか、フリーランスとして働くか」だけに言えることではないでしょう。就活をしている人から聞くことの多い「大企業に勤めるか、ベンチャーに勤めるか」についても同様だと思っています。

どんな企業に勤めていても、どんな働き方をしていても、何か目的意識を持っていなければ、働いていてただただ空虚な気持ちになるのは同じことではないでしょうか。「やりたいことを実現したい」でもいいし、「安定した収入がほしい」でもいいです。優先すべきは「目的」であって、働き方はあくまで、それに応じて選ぶべきだと思うのです。

息苦しい働き方を続ければ、いつかこの社会は死んでいく

私がフリーランスという働き方を選択したのは、心身の健康を優先するためでした。安定収入がほしくて会社員をしていたものの、体が弱くて精神を病んでいた私にとって、会社員として働き続けることは、命を削る行為だったのです。

幸い、私はやりたいことを仕事にできていますが、フリーランスとして働いている今でも、会社員を羨ましく思うことがあります。安定収入を得ること以外にも、会社員にはたくさんのメリットがあると考えているからです。もし会社組織に属しながらやりたい仕事ができれば、1人で動くよりも、より大きなイノベーションを起こすことができます。経済力も人員力も、フリーランスとは馬力がまるで違います。個人でできることにはやはり限界があり、大きな革命を起こすのはハードルが高いので、私としてはじれったい気持ちになることも多いのが本音です。しかし先ほども申し上げたとおり、私が最優先する「目的」は心身の健康を取り戻すことです。今の自分に最適な環境で働きながら、今の自分ができることを積み上げることでキャリアアップを図っています。

「会社員は嫌だ」と言っていた人がフリーランスとして働き始めた結果、再び会社員になったケースをたくさん見てきました。彼らはフリーランスで失敗して仕方なく会社員に復活したわけではなく、自ら「自分には会社員の方が合っていた」と考えた上で選択をしていました。

少子高齢化のこの時代に必要なのは、多様な働き方の中から自分が最も働きやすい環境を見つけ、一人一人の生産力をいかに上げられるか、ということではないでしょうか。このままみんなが自分に合わない息苦しい働き方を続ければ、みんなが疲れ切ってしまって、いつかこの社会はゆるやかに死んでいくでしょう。

「自分の人生は普通だ、平凡だ」と思うのは働き方に問題があるのではなく、おそらく「自分にとって最適な環境でパフォーマンスができているかどうか」の問題です。決して会社員の方が優れているとか、フリーランスの方が非凡だとか、ひとくくりにして語ることはできません。

今自分が最優先したいこと、将来的に実現したい夢、自分が持っているスキル。これらをバランスよく考えて、自分に最適な働き方を選択する人が増えてくれればいいと願っています。心身の健康を保って、より良い生活ができる人が1人でも多くなるように。たくさんの人が豊かな人生を送ることができるように。


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