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少子化の時代でも1億円の設備投資を実行。「パロディ菓子」を武器に攻め続ける駄菓子メーカー、オリオン
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  • 2019.05.27
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少子化の時代でも1億円の設備投資を実行。「パロディ菓子」を武器に攻め続ける駄菓子メーカー、オリオン

Copyright 2017 ORION COMPANY. All Rights Reserved.

取材・文:6PAC

高岡五郎

オリオン株式会社常務取締役 企画本部長

1977年関西大学工学部応用科学科卒。同年、オリオン株式会社に入社。97年より取締役就任。

「30年後も売り続ける」ために少子化でも設備投資1億円

高岡五郎氏
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総務省統計局によると、日本の人口は、2011年以降継続的な減少傾向へと転じたそうだ。一般消費財などは人口減少でダメージを受ける可能性の高い領域だが、食品などは特にその影響を顕著に受けるものだと言われている。そうした未来予測をベースに、海外市場に活路を見出そうとしているメーカーは多い。

一方、国内市場でまだまだ元気な姿を見せているメーカーもある。1982年から37年連続で子どもの数が減少し続けている少子化社会の日本で、「ココアシガレット」や「ミニコーラ」といった駄菓子を売り続けているオリオンの高岡五郎氏に話を訊いた。

「ココアシガレット」の1954年(昭和24年)当時のパッケージ
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今年の4月6日、同社が主力商品であるミニコーラの生産ラインを1億円かけて設備増強したという記事が、日本経済新聞に掲載された。少子化に歯止めが効かない日本でなぜ?と思い、率直に疑問をぶつけてみた。

すると、「私が30代の時にミニコーラやココアシガレットの生産自動化が始まりました。それから30年以上経過し、幾度となく値上げや悪いイメージの商品と言われ、何度もピンチに立たされながらも従業員の努力で乗り越えてきました。これらの商品をあと30年以上売り続けるために設備投資をして、商品にもっと改善・改良を加えます。少子化などの不安はありますが市場を海外に求めていきます」という答えが返ってきた。

時代に合わせる努力から『マイコス(myCOS)』誕生

2018年に販売開始し、多きな話題を呼んだミント味のシガレット「myCOS」。1箱6本入りで価格は50円(税込)。
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オリオンが生き残るための戦略として、主力商品に対する設備投資だけでなく、時代に合わせる努力も怠らない。ピーク時には年間約1800万個、今でも年間約400万個の売り上げを誇る主力商品のココアシガレットは、タバコの「ピース」をモチーフに、大人の真似をしたがる子供心をくすぐりヒット商品となった。しかし、昨年発売したのは電子タバコをモチーフにした『マイコス(myCOS)』だ。

昨今の禁煙志向の高まりを受けてか、パッケージには「2011年からオリオンはあなたの禁煙を応援します」という記載がある。駄菓子で世界を笑顔にするという意味から、訪日外国人観光客向けの商品という位置づけだった。ところが、マイコスと舞妓をかけて舞妓さんの絵をパッケージデザインに入れたところ、日本国内でバズることとなった。アマゾンの食玩部門で1位になるなど、インターネット上のバズと比例して、急速に売り上げも拡大。「商品の製造が間に合わない状態が続きました」と高岡氏は語る。

また若者に人気のシンガーソングライター、あいみょんがココアシガレットを片手にした写真をインスタグラムに投稿したことで、こちらもネット上で話題となった。

同氏は、「これを見てもおわかりになるように、オリオンのお菓子はおいしさのほかに、遊び心や夢、楽しさや思い出などがいっぱい詰まったパロディ菓子なのです」と誇らしげだ。

同社のパロディ菓子には、携帯電話モチーフの「CoDoMo」、市販薬モチーフの「ビヲフェロモン」や「正論丸」といったものまである。こうしたパロディ菓子は、社内会議ではなく居酒屋などで思いつくケースが多いという。お酒の力を利用し、ノリや勢いで出てきたアイデアの中から「いいな」と思ったものはとにかく発売してみるそうだ。パロディ菓子を発売すると、パロディの対象となった企業から怒られることも多々あるという。時には裁判となるケースもあり、パロディ菓子の発売にはリスクがつきまとう。

「駄菓子=体に良くないお菓子」といった悪いイメージももはや過去の話で、歯科医と共同開発した「ハローキティ キシリブルーベリータブレット」という商品もある。開発の裏には同氏が入社した際、「梅ミンツ」を食べすぎて虫歯だらけになった経験があるという。その後、菓子作りの製法で歯の健康に良いものができないかという試行錯誤が続き、「はみがき屋さん」という前身のタブレットを経て、「ハローキティ キシリブルーベリータブレット」へとつながっていった。

商品だけでなくアイドルグループも発足

最近では商品だけでなく、大阪の駄菓子メーカー6社の共同プロジェクトとして「da-gashi☆(ダガシ)」という7人組のアイドルグループも発足させた。きっかけは、2015年に発足し、全国140社のメーカーが加入する「DAGASHIで世界を笑顔にする会」だ。

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同会では、3月12日を駄菓子の日と定め、駄菓子と笑顔の交換日として各地で駄菓子を手渡しで配るイベントを実施している。そのイベントで「メーカーの人間が配るより、かわいい女の子が配った方がもらった方ももっとうれしいのでは」と思ったことが事の発端だった。大阪の芸能プロダクションに相談し、他の大阪の駄菓子メーカーに協力を依頼したところ、とんとん拍子で話が進んでいき、昨年6月のオーディションから2カ月後の8月にはデビュー記者会見を行った。

デビュー後は、地下鉄のイベント協力、障がい者のクリスマス会などの活動を経験し、今年の2月にはCDも発売している。「現在平均年齢13歳のda-gashi☆が大阪万博で活躍する姿を夢に、世界に駄菓子をアピールしていきたいと思います」と同氏は言う。

オリオンのトレードマークの星にちなんで出来た4Cは、「見て楽しい」、「もらってうれしい」、「食べておいしい」、「また欲しい」の4つの“しい(C)”のことだ。この4Cが同社の商品作りのコンセプトとなっているが、これに「作っている者たちの魂がプラスされると5つ星のロングセラー商品が生まれると信じています」という。世界に駄菓子を広めていく過程で、海外でもウケる世界的なパロディ菓子の登場に期待したい。


オリオン株式会社

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