EVENT | 2020/03/09

コロナ対応で「リモートワーク 導入」とググる人必見!700人以上のメンバーほぼ全員がリモートワークで働くキャスター石倉秀明が語る、明日からできるリモートワーク対応・4つのポイント

キャスター社で実際に行ったリモート会議の様子
今回登場するのは、全国で700人以上が完全リモートワークで働くIT企業、...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

キャスター社で実際に行ったリモート会議の様子

今回登場するのは、全国で700人以上が完全リモートワークで働くIT企業、キャスター社取締役COO、その子会社であるbosyu社の代表取締役社長である石倉秀明氏だ。

キャスター社は秘書・人事・経理・ウェブサイト運用など、日常雑務から専門分野まで幅広い業務をトータルにサポートするオンラインアシスタントサービス「CASTER BIZ」、厳選された採用のプロが、プランニングからスカウト・日程調整まであらゆる採用業務を一括代行する「CASTER BIZ recruiting」などのサービスを展開。

また「bosyu」は「早起きのコツ教えます」「あなたにオススメのコスメ選びます」といったちょっとしたしごとから「飲み会の参加者募集」まで、どんな小さなことでも報酬や会費を設定(無料も可能)したうえで募集できるというサービスだ。

そんな同社が、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、緊急避難的な施策としてリモートワークを推奨する企業が増加したことを受け、長年の知見をまとめた資料「700名以上のリモートワーカーが活躍する組織におけるリモートワーク導入のポイント」を、プレゼンテーション共有サービス「Speaker Deck」にて2月6日に無料公開。すぐさまSNSで大きな反響を呼んだ。

もしこの記事を読んでいるあなたが、今日明日にでも導入にあたって概要をまとめなければならない立場にいるようであれば、まずはこのインタビューではなく上記資料のリンクをタップして読んでほしい。それほどまでにコンパクトかつ必要な情報が凝縮されているからだ。

今回のインタビューでは、この資料の内容を踏まえ、実際にリモートワークを導入するにあたって特に気をつけるべきポイント、リモートワークを導入することの経営・業務上のメリット、上司や経営陣から反対があった際のための反論方法、そして今後リモートワークがより普及した際、社員、ひいては社会がどのように変わり、良くなるのかなどをうかがった。

取材・文:神保勇揮

石倉秀明

株式会社キャスター取締役COO 株式会社bosyu代表取締役

2005年、株式会社リクルートHRマーケティング入社。 2009年には株式会社リブセンスに転職し、求人サイト「ジョブセンス」の事業責任者に。 その後、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)を経て、現在はかんたん募集サービス「bosyu」を運営するbosyu社の代表取締役と「リモートワークを当たり前にする」をミッションに、オンラインアシスタントサービスなどを提供するキャスター社の取締役COOを兼任。

ポイント①導入可否、最初のチェックポイントは「ハード・制度」の有無

以下、「700名以上のリモートワーカーが活躍する組織におけるリモートワーク導入のポイント」より抜粋

―― キャスター社では「Caster Anywhere」というサービスを展開し、リモートワーク制度導入のコンサルティングも行っています。やはり先月あたりから相談が増えてきましたか?

石倉:はい。この1カ月で約20社からの問い合わせがありました。多いのはやはりホワイトカラーと呼ばれる職種が多い業態、特にIT系で、皆が知っているような大手からも相談が来ました。社員の規模感はさまざまですね。

石倉秀明氏

―― そもそもコロナ対策で「緊急避難的なリモートワーク」を導入(もしくは成功)しやすい企業の業種・部署・規模などはあるものなのでしょうか?

石倉:まず部門について一般論を言うと、例えば総務は「オフィスにいて紙の書類を受け取らなければいけないから難しい(ペーパーレス化されていれば問題ない)」ということはありえるでしょうし、業務や報連相の大半がオンライン上で完結させられているかどうかは前提条件としてあると思います。ただそれも含めても、リモートワークの新規導入にあたっては「ハード・制度が整っているかどうか」ということの方が重要です。

リモートワークを一時的にしろ認められる就業規則・雇用契約書になっているか(変えられるか)、PCを社外に持ち出すことができ、社用データにどの場所でもアクセスできるかどうか。また社員の自宅などの通信状況が整っているかも重要です。特にスマホネイティブの20代前半の世代は、意外と「自宅にWi-Fi環境がない」という人も多いので。

あともうひとつ、「チャットツール・オンライン会議ツールでのコミュニケーションが当たり前の社内文化として根付いているか」も重要ですね。これらが揃っていないと「明日からすぐ」というのはちょっと難しいかもしれません。

ポイント②「どんなツールを使うか」より「使い方」が重要

―― 緊急避難的なリモートワークを導入するための必須項目として「労務管理/人事制度」、「コミュニケーションツール」、「システム/セキュリティ」の準備を挙げていらっしゃいます。中でも特に「システム/セキュリティ」について、「こうしたツール・サービスを使用するとコスパがいい」などの具体的なアドバイスをもう少しお聞きしたいです。

石倉:僕のnote記事「700名以上がリモートワークのキャスター/bosyu社を経営する僕が思うリモートワーク(テレワーク)」でもそのあたりのことを書きました。キャスター社、bosyu社ともに、独自開発の特別なツールは使っていません。Zoom(ビデオ会議ツール)、Slack・チャットワーク(チャットツール)のような有名サービスばかりです。

そして「どんなツールを使うか」よりも「運用ルール」「利用方法の教育」の方が圧倒的に重要です。情報漏えいはシステム・ツールより人を経由しての方が圧倒的に高いですし。例えば「カフェなどのフリーWi-Fiを使わない」、「画面を開いたまま離席しない」とか、「不特定多数が集まる場所で機密情報を話さない」といった基本を徹底してもらうということです。そして、加えて言えば「紙資料が存在していること」の方がリスク高いと思っています。どうしても紛失が生じてしまいますし、そのこと自体にも気づきにくいです。

セキュリティという観点で、意外とまだ使っていない会社が多いオススメツールが「パスワード管理ツール」です。キャスター社では「LastPass」というツールを使っていますし、「1Password」も有名です。こうしたツールを使うと「パスワード管理ツール経由で社員に権限付与すれば、各社員はパスワードを知らなくてもWebサービスにログインする」ということができたりします。

ポイント③オフィスで働いている皆さんは一人もサボっていないんですか?

―― 次は導入にあたってのソフト面、特に人事評価についてお聞きしたいです。

石倉:よく聞かれるんですが、基本的に評価のあり方はオフィスで働いている場合と変わらないはずです。「目標を達成できたか」がメインなのは変わらないというか。あえてリモートワークが異なるところを挙げるとすれば「人がその場所にいること」で担保されていた価値が見えなくなる、ということでしょうか。

―― 導入反対派からは「サボる人がいるんじゃないか」とも言われそうです。

石倉:確かにそれもよく聞かれます。でもこう返しています。「では、オフィスで働いている皆さんは全員がまったくサボっていないんですか?」と。良し悪しは別として、みんなタバコを吸ったりコンビニに行ったりしていますよね。それにもしかしたら、実はオフィスでも仕事をしていない人もいるかもしれません。それを全員分きっちり監視するのは現実的ではないのと同じことです。そして成果が出ないのであれば評価を下げればいい。

多くの人にとって「一定時間、特定のオフィスに居てもらうことこそが仕事なのだ」という価値観がまだまだ強いのだと思います。

ポイント④完全リモートワークを実現できる会社は、採用に困らない

―― 「700名以上の~」では、経営者・決裁権者向けのわかりやすい資料として「4つの導入効果(コストダウン、採用力の向上、生産性の向上、事業継続性の確保)」の項目があります。この中でも一番響きそうなメリットはどこにあるのでしょうか。

石倉:「全社員リモートワークの会社の経営者からみたメリット」としてお答えすると、「採用力の向上」が一番効いていると感じます。僕らはこれまで採用に一切困ったことがありません。

我々の求人募集は自社サイトにしか掲載しておらず、求人媒体を一切利用していませんが、毎月1000~2000件の応募が来ています。候補者を特定の地域の人に限定せず、全国47都道府県に広げるだけで、これまでなら「特定のオフィスで特定の時間帯に勤務できる」という条件を満たせず、取りこぼしていた優秀な人を採用できるチャンスがすごく増えます。そしてこれに対応できていない会社がまだ大半ですので、我々の競争優位性も高いのです。

また細かい話をすると、完全リモートワークにすれば交通費・オフィス賃料といった固定費が要らなくなりますし、会社のマネジメントもやりやすくなります。というのも、みんながチャットツール上でオープンにコミュニケーションしているので、マネジメント層からすれば会社で何が起こっているか、どんな会話が行われているかがすごく見えやすくなる。今までは会議に出席しなければわからなかったような話も、全部チャットを読めばわかるようになるんです。

リモートワークが一般化した社会では「ふつうの人の時代」がやってくる

―― ここからは中長期的なリモートワーク導入の是非や影響についてお聞きします。石倉さんはより多くの会社がリモートワークを導入すべきだと考えますか?

石倉:恒久的な施策か、緊急避難的なものかによっても変わってくると思います。ただ新型コロナウイルスの感染が拡大する中で多くの企業が「何かあった時に会社機能が停止しないよう、場所問わず仕事ができる環境を整えなければならない」という必要性を実感していると思うんです。

―― 3.11直後には「オフィスが被害を受けたり、社員が出社できなくなってしまったりした時の対策として、災害時のBCP(事業継続計画)策定が必須だ」という話題が経済誌で頻出し、大企業・上場企業は定めてきたかと思いますが、結構すぐ熱が冷めてしまいましたし、中小企業まで徹底できているかといえば……ですね。

石倉:その通りですね。次にこうしたことが起こって後悔しないよう、全社員リモートワーク化とまではいかずとも、事業に影響を与えない範囲でそれができうる体制は絶対に作っておくべきだと思います。

―― 今回の件でリモートワーク制度を導入する企業が一気に増えていきそうですが、今後より一般化してくると、日本社会はどのように変わっていくのでしょうか?

石倉:僕は「ふつうの人」の時代がやってくる、というかすでにやってきているのだと思っています。

―― それはどういうことですか?

石倉:最近のビジネス書・自己啓発本では「これからは個の時代だ!」みたいなことをよく言いますよね。「スキルを磨いて市場価値を上げよう!」といったような。それが悪いとは言いませんが、全員がそうなれるか、なりたいと思っているかというと、意外とそうではないと思うんです。

これまでの日本の企業社会では
・どこに住んでいるか
・正社員か非正規か
・どんな経歴を有しているか
という要素がビジネスパーソンの評価を決める前提にあり、大きく給料の差が生じていました。

逆にいうと
・地方在住で
・非正規またはアルバイトで
・きらびやかな経歴を持っていない人
の給料はすごく低いままであるという傾向が定着化してしまっていたということです。

キャスター社、bosyu社ともに雇用形態の差を設けず、同一労働同一賃金の原則を適用しています。これに加えて完全リモートワーク化すると、全国どこでもフラットな条件で仕事をすることになるんです。これを推し進めると、例えば事務能力がすごく高いのに、正社員じゃないからという理由だけで評価されてこなかった人が出世し、チャレンジングな仕事に関われる可能性がすごく高まる。社会的に不利な環境に留まらざるを得なかった人が逆転する可能性もあるんです。

その逆に、完全リモートワークだと成果がよりはっきりわかってしまうので「仕事ができる風」の人が実はそうでもなかったということがバレてもしまうわけですが。

キャスター社で活躍しているマネージャーはほぼ女性です。地方在住の人も多い。完全にフラットな実力勝負になると「東京に住んでいる」という価値すらなくなってしまう。経歴なんてもちろん関係ない。この取り組みを4年間やってわかったのは「自分の役割をまっとうできる」というのは、当たり前とされていつつも意外とできる人が少なかったという意味ですごく尊いのに、過小評価されてきたということなんです。

「仕事」の評価要素を改めて考える

―― おっしゃるロジックは非常に明快でわかりやすいですし、実際救われる人も多いのだとも感じます。ただ一方で、「ふつう」と文字にしてしまうと、先の話にもあった通り、その「ふつう」の達成は意外と大変でできる人が少なく、成果主義を導入することで逆に多くの人の昇給が難しくなってしまったり、クラウドソーシングが普及したことでさらに報酬単価が下がってしまったりというような悪影響が生じてしまうのではないかと怖くも感じてしまいました。自分が「東京在住の男性正社員」という明らかな既得権側にいるからかもしれませんが……。

石倉:おっしゃるような不安はよくわかります。でも、改めて自分たちの「仕事」が何をするもので、何が目的なのかを因数分解してみてほしいんです。仕事って「いつまでに」「何が」「どのぐらいのレベルで達成できたか」の3要素で構成されていて、これらで合格点が取れるかどうかしかないですよね。これらを通じて上司やクライアントに満足してもらい、「この人なら任せて大丈夫だろう」という信頼を獲得していく。もちろん、そのために仕事を定量的・定性的に評価できる基準を会社側は作っておく必要がありますが。

リモートワークでは働いている姿が見えないからこそ、不安にさせないことがすごく大事です。これまでは「オフィスに出社し、物理的な姿を見せる」ということでそこをカバーしてきたわけですよね。

―― なるほど。

石倉:僕が言っている「ふつう」というのは、

・約束を守る
・わからないことをそのままにしないで聞く
・仕事が終わらなさそうなら早めに相談する
・表と裏で違うことを言わない
・やるべき仕事をきちんとやる

といったような、新社会人が最初に教わるようなレベルの話なんです。でも、全部できているかといえば意外とできていないところもあるよね、という。

病欠やたとえ私用でも「有給」がなるべく減らない会社・社会へ

―― よくわかりました。その他にもリモートワーク普及が進むと変わる物事はあるのでしょうか?

石倉:もうひとつ大きいのは、今まで通勤時間に使っていた2~3時間ぐらいが、社会の多くの人に突然ポンっと生まれる可能性があるということでしょうか。これをどう過ごすかというライフスタイルの大転換が起こりうるというか。

副業するでも家族と接する時間を増やすでも何でもいいですし、それによって幸福度が高まる可能性がある。逆に趣味がない、家庭に居場所ない人はもっとキツくなってしまうかもしれませんし、「自分の生活、ライフスタイルをどう充実させるか」ということがもっと重要な問題になってくるかもしれません。

―― ちなみにbosyu社では3月1日から、勤務制度を「①フレックス制のうえでさらにコアタイム無し」「②月間で契約時間の75%以上(フルタイムの契約の場合、120時間/月)働いていれば減給しない」というかたちで変更しています。特に②は、解説のnote記事にもあった「体調不良で休み=有休消化、をやめたかった。そして毎日働く時間は8時間である意味は別にない」という導入経緯がものすごいインパクトだと感じました。

石倉:noteの記事にも書いたんですけど、もとは外資系企業によくあるシックリーブ(Sick Leave。病気や体調不良の際、年次の有給休暇とは別に消費できる有給制度)を導入しようと思っていたんです。ただそうじゃなくて「私用がある」「失恋して仕事に身が入らない」なんて時でも使える制度にしたかったんです。失恋だとシックリーブを使えないですし(笑)。

―― それはめちゃくちゃ助かりますね(笑)。

副業可能人材を、自分の会社で真に活躍してもらうために

石倉:あと「フレックスかつコアタイムなし」「1日の労働時間が8時間である必要はない」という制度のメリットもいくつかあるんですが、例えば「時短」という概念がなくなるんですね。

もうひとつのメリットは「副業でbosyu社に関わってくれる人の活躍可能性を高める」ということです。いろんな調査データを読むと、副業に興味があると答える人は多くても、実際にできている人はなかなか少ない。ネックは大体「時間がない」なんです。

当たり前ですけど副業に費やせる時間帯は平日夜か土日がほとんどで、その時間に受け入れる側の社員が誰も働いていないとコミュニケーションが取りづらく、パフォーマンスが上がりづらい。

今回の制度によって、bosyu社の社員が働く時間や曜日を自由に選択できるようにすることで副業で関わってくれる人に合わせて働くこともできるとそういったことが改善され、より多くの人に副業という形でも関わってもらいやすくなるのかなと思っています。

2月28日の小中高校の一斉休校要請があって、仕事が減って収入が急激に下ってしまうフリーランスの方、非正規の方がかなり生じてしまっていると感じます。bosyu社として何か支援ができないかと思って「bosyu相談室」というサービスを立ち上げました。これはbosyuに掲載された仕事の手動マッチングおよび、相談いただいた方が実行可能な仕事については、企業などへの発注促進を行っていくというもので、募集者・応募者のシステム利用手数料(報酬の5%)も無料にしています。

bosyu社のHPでもトップページで「#bosyu相談室」を大々的に告知している

すでにTwitterでも「#bosyu相談室」というハッシュタグでさまざまな仕事募集がありますし、「自分はこんなことができる」「これをいくらでやってほしい」に金額をつけてぜひトライしてみていただきたいです。