LIFE STYLE | 2020/02/18

「ママ」という言葉さえ忘れてしまった認知症の5歳少女。記憶が消えゆく中、家族は幸せな思い出を作り続ける

文:wonders7
5歳といえば、本来無限に広がる夢に胸が高鳴る頃だろう。しかしそんな年齢でありながら、小児の認知症...

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文:wonders7

5歳といえば、本来無限に広がる夢に胸が高鳴る頃だろう。しかしそんな年齢でありながら、小児の認知症と戦っている一人の少女がいる。

記憶が消えゆく中、幸せな思い出を日々作り続ける少女と家族の姿が、SNS上で反響を呼んでいる。

小児の認知症「サンフィリポ症候群」と診断

英国ウェストミッドランズ州スタッフォードで3人の子どもを抱えて暮らすアンドリュー・ミルズさん(44歳)、ケリー・ミルズさん(40歳)夫妻は、末っ子の娘ペニーちゃんが2歳の時、違和感を覚えるようになった。トイレトレーニングに苦労し、下痢をしていることも理解していないようだった。

保育園で同年代の子どもとのコミュニケーションが上手くできず、一緒に遊べなくなったペニーちゃん。難聴を患っており3歳で補聴器を使用するようになった。そして2018年9月、4歳の時に小児の認知症である「サンフィリポ症候群」と診断された。

サンフィリポ症候群とは、重度の精神発達の遅滞、アルツハイマーのような知能・記憶障害などの症状があり、寿命は概ね20歳代とされている。日本における患者数は平成13年の全国調査では19例しかいない非常に珍しい難病だ。

「診断を受けたときは、本当にショックでした。珍しい症例だと、病気についてのパンフレットを渡されました」「そして最初に目に飛び込んできたのが『緩和ケア』という言葉で、娘の命に限りがあるとわかりました。打ちひしがれるような想いでした」とケリーさんは『METRO』に語った。 

今この瞬間を笑顔の「記憶」に。家族の強い決断

4歳の時にはペニーちゃんは150語を話すことが出来たが、昨年10月にはチーズやチョコレート、ビスケット、兄の名前を忘れてしまい、今は10語しか話すことが出来ない。「娘はかつて『ママ』と言っていましたが、最後にそれを言ったのをもう覚えていません」とケリーさん。今はまだ両親を認識しているが、それももう長くは続かないという。

ケリーさんは「娘が末期症状になった時に、過去を振り返って、将来について不安に感じただけだと思いたくない」と語る。その言葉の通り、ペニーちゃんに少しでも多く楽しい思い出を作りたいと考えている。

昨年のクリスマス前には仏パリのディズニーランドに家族に訪れ、来年はフロリダのディズニーワールドに行く予定だという。また、英国の子ども番組「CBeebies」の歌のお兄さんミスター・タンブルに会おうとしている。

 現在『GoFundMe』では、ペニーちゃんをサポートするクラウドファンディングが実施されている。命の長さではなく、1秒1秒をどう過ごすか。5歳の少女の屈託のない笑顔に、命の重さとその意味を教えられる。